あれは、遠い遠い昔、30年も昔のことです。
ロマンチック街道を下からフランクフルトに向かう途中の「ローテンブルク」に立ち寄った時のお話です。
その年にはニューヨークでの留学を終えて、ヨーロッパを旅してから日本に帰る予定で最後の国になるドイツに入って数日という頃でした。
季節は11月、ヨーロッパのこの頃は既に結構寒かったのを覚えています。
ニューヨークで一緒に住んでいた友達がその年の10月に、ニューヨークの「The United Nations Church」で結婚式を挙げました。(この友人とは今でも毎年海外旅行をしています)
新婚旅行に出かけた友人をニューヨークで見送り、私はイギリスに留学していた友人と合流してヨーロッパを旅していました。
オーストリアから最後の国となるドイツまで、バスでロマンチック街道を北上していました。
私の終点はフランクフルト。
そこからは一度飛行機でニューヨークに戻り、友人に預けた荷物を船便で送ったりという仕事を残していました。
友人はそのまま一人旅を続け、チェコに入る予定で動いていました。
そしてドイツもあと3日、一ヶ月も一緒に旅した彼女とのお別れも迫っていました。
バスから降りて観光を楽しむ私たち。
中世の街並みをそのまま残した宝石箱のような小さな街、それが「ローテンブルク」です。
ここからは、物語風に書いてみます。
夕方の風が気持よい時間になりました。
城壁は一周ぐるっと周れるので、バスの時間を考えるとそんなにゆっくりは歩けません。
「くぅちゃん、お城、半周も行かずに戻る?」
「ありえないよ!急ぎ足で一周するよ!」
早歩きで半分以上歩いた私たちは足を止め、そのメルヘンチックな物語に出てくる家々のような屋根を見つめていました。
「とうとう明日はフランクフルトだし、もうすぐ終わっちゃうね~」
「私もチェコ行きたーい!!」
「でも、なるはニューヨークからの航空券の期限があるんでしょ?」
「うん…寂しいよ…」
その時でした。
壁沿いに流れるように吹いた風で私の帽子が飛んで行ってしまいました。
イラスト:Saiさん
「あっ!!」
「あーーーー!」
帽子はツバの部分に芯があるためか、トントンと音をたてて茜色の屋根の上を踊るように舞っています。
「どうしよう…」
そんなに遠くはないけど、手は届く距離じゃない。
そして確実に少しずつ遠ざかっていきます。
「なる…諦めよう、追いかけたとしても、屋根から落ちてきてくれるかもわからないし…」
「うん…」
その帽子とはニューヨークにいる間とヨーロッパ旅行の間、ずっと一緒だったのです。
身支度の最後に帽子を被るとホッとする位、自分の身体の一部になっていました。
悲しくて涙目になっている、待って、待って~。
トントン…その音がどんどん遠ざかっていきます。
「Oh, lady!Let's say Good-bye to your hat with us!」
バスで一緒だった老夫婦が真横にいました。
私の帽子に2人で手を振っていました。
私もくぅちゃんも必死に手を振りました。
「バイバイ!!」
「元気でね~!!」
「Good -bye!hat!!」
「See you!hat!」
老夫婦と目を見合わせ、4人はにっこりと笑い合いました。
そして一緒にバスまで早歩きで向かいました。
fin~
もし、今ローテンブルクに行くことがあったら、私は同じ場所に行くと思います。
屋根のどこかに、藍色の点がないかと探してしまいそうです。
これを読んだ皆さまも、もしローテンブルクに行く機会があったら、私の帽子を探しちゃうかもしれませんね…←ソリャナイカ( ゚Д゚)
これが私が経験した、ドイツのローテンブルクでの旅の一コマです。
ブログ友達のSaiさんの企画に当選した時に、真っ先に思い浮かんだこのシーンをイラストにしていただきました。
本当にその場にいらしたわけでもないのに、簡単なあらすじだけで素敵なイラストを仕上げて下さいました。
どんな場所だったか、少し写真を貼らせていただきますが、寸分違わないイラストの凄さを見ていただきたいのです。
↑ ローテンブルクの城壁回廊と家々の屋根
↓ Saiさんの企画記事はこちら
(現在、Saiさんははてなの無料ブログに移行され、id:sai_kurashi に移転されています)
Saiさん、素敵なイラストを描いて下さり、本当にありがとうございました。
今とっても悩んでいて、「旅の思い出」というカテゴリーをいつの日かつくりたいと思っているのですが、どうしても写真だけでやりたくないのです。
文章は物語風にしたいと、そこまでは考えているのですが、自分でイラストが描けたら本当は即解決なのです。
しかし、絵は得意じゃないのでどうしようかな…と思って考えていました。
今回こんな形で、その夢の一端が叶ってしまい、本当に嬉しかったです。
皆さま、読んで下さり本当にありがとうございますm(__)m
そしてSaiさん、素敵な企画に当選できて感謝でいっぱいです。
本当にありがとうございました!(*´▽`*)