「エルピス」とは古代ギリシャ語で「希望」という意味です。
このドラマの副題になっているのがー希望、あるいは災いーとなっているところも今思えば非常に興味深いです。
エルピスとは、「古代ギリシャ神話で、中からさまざまな厄災が飛び出したと伝えられる『パンドラの箱(壺)』に唯一残されていたものだというのです。
私は日本のドラマに対し、大きな期待感を持ってワクワクとした気持ちで観たことはここしばらくありませんでした。
息子が出るのは観ますが、いつもドラマ1話の中のワンシーンに登場するくらいなので、何話目に出るのか聞いて、他の回は観ないほど引き込まれることはありませんでした。
だからこそ韓ドラに驚かされ、ハマって行ったのかもしれません。
韓ドラだけでなく、アメリカやヨーロッパのドラマにも入口から興味を持てるものが多く存在します。
ですが日本のドラマはまず、
- 色合いが無駄に明るい
- ヤバい内容は皆無(タブーに踏み込まない)
- 誰が観てもまぁ無難
という感じのものが多い印象です。
国の方針と言えばそうなのかもしれないし、国や政府への批判めいたものや差別、マイノリティーに切り込んだものはNGとされているのかもしれません。
それを結構な切り口と鋭さで切り込んできたのがこの「エルピス」というドラマだと思います。
↑ https://www.cinemacafe.net/article/2022/11/08/81814.htmlより引用させていただきました
このドラマは社会的な側面が多く描かれ、テレビ局の在り方に切り込んだタブーとも言える描写、政治とニュースの関係性など色々な部分で考えさせられるドラマになっています。
主役の長澤まさみさんも素晴らしいですし、鈴木亮平さん、真栄田郷敦さんもこれまでの役とは結構違うのに役にハマっていて素敵です!
このドラマがフジテレビで放送にこぎつけるまでにはなんと6年もの歳月が流れています。
佐野亜裕美プロデューサーがNHK朝ドラ「カーネーション」などを手掛ける脚本家・渡辺あや氏の元を訪ねたところがスタートです。
佐野さんが死刑囚の日記を読んだり、裁判の傍聴に行くのがライフワークであることから話が弾んで渡辺さんは「未解決の冤罪事件」という視点ならいい作品が出来ると確信したのだそうです。
警察や検察、裁判所までも敵に回すことになるかもしれないこのドラマに対して佐野プロデューサーが所属していたTBSはハードルが高すぎるとこの企画を「ボツ」にしました。
↑ https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/1029/hwc_221029_8608309545.htmlより引用させていただきました
ストーリーの中では、これが原因で別れた過去があるお2人です…
3話まで出来上がったところで長澤さんにオファーしたところ、「是非やりたい」との快諾を得たのに放送は許可されない…。
佐野プロデューサーは海外事業部への異動まで言い渡されてしまいました。
どうしても「エルピス」を世に出したいと考えた佐野さんは、失意のうちにTBSを退社して営業を続けました。
これは世に出すべき作品だと引き受けてくれたのが「カンテレ」でした。
そして佐野さん自身もカンテレに転職を果たし、満を持して月曜の夜10時の枠で放送を実現させたのです。
「無事に最後まで私達は視聴できるのか…」常にそんな不安が付きまとう作品はこれまでにそうは無かったと思います。
今は亡き安部元首相の姿やオリンピック招致についてのニュースも流れます。
第2話のそのニュースシーンはオンタイムでは観れましたが、Tverなどの配信では映像が置き換わっていたようです。
「オンタイムで見るべきドラマだ!」とTwitterでも話題になっていました。
↑ https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/より引用させていただきました
第3話でキャストにお名前が出ていないのにサプライズで出演された永山瑛太さん!
これはとってもビックリしました。
3話まで観ての私なりの感想ですが、これはドラマの撮り方というより「映画」に近いと思いました。
そして、日本人はこれまでのエンタメでは「臭いものには蓋を!」の精神でやってきたことがもの凄く浮彫りになってしまったなと思いました。
韓ドラのように、ちょっとエグイ場面も「これが今韓国で起こっている現実だ!」という意味で突き詰めているシーンを何度も観ました。
アカデミー賞を取った「半地下の家族」も貧富の差を思いっきり表面に出して描いていたし、実際にはニュースで取り上げられた「大雨で埋没してしまう半地下の家々」というようなニュースでその現実を再認識させられました。
↑ 大雨で沈んだ韓国の「半地下」 危険性が浮き彫りに | NHKより引用させていただきました
これでは、私たちは他国の問題点は沢山知っていても、日本国内の問題点に関してはボヤけたまま、マスコミが創りあげた色がついた世界をフェイクと疑うこともなく、現実だと信じて生きていることになります。
もちろんエグイことばかりを取り上げるということでは決してありませんが、日本でも明らかに「問題視」されるべきことに焦点をあてたドラマや映画を否定するのは可笑しいと思うのでこういうドラマの未来にも希望があっていいと思います。
長澤まさみさん演じるキャスターがニュース番組のサブキャスターを務めた6年間について、
「自分があたかも真実かのように伝えた事の中に、本当の真実がどれほどあったのかと思うと、苦しくて苦しくて息が詰まりそうになります」というシーンがとても印象的でした。
真栄田さんの「僕は正しいことをやりたいんだ!!」という言葉も響きました。
撮影協力をして下さったのが「尼崎市」というところもとっても興味深かったです!
死刑囚は自分の死刑がいつ執行されるのか知らないのです。
↑ 死刑囚にとって朝は恐怖なのです…
朝、看守が歩いてくる足音を聞きながら、「今日こそ、その日かもしれない」と思って日々過ごしているのですね…。
それが冤罪だったとしたら…真実は一日でも早く暴かれないと間に合わない…
このドラマが変な圧力を受けることなく、無事に最後まで放送出来ることを祈っております。
日本には表現の自由があるというのなら、最後まで放送できるはずです!!