「立ち退きモラトリアム」とは、「新型コロナウイルス禍で家賃が払えなくなった人向けに米政府が設けていた立ち退き猶予措置」のことです。
2022年の8月でその措置が無くなってしまったのです。
全米の賃借住宅に住む約5分の1が、コロナが理由で家賃を滞納していると推定されています。
それらの人々が「生活費の値上がり」の中で家賃が払えず、立ち退きの強制執行を受けているのが現状です。
↑ どうやれば国は彼らを支えられるのでしょうか…
立ち退きの現場はなかなかシビアなものです。
裁判所から警察官が派遣され、警察官の到着から約10分で、立ち退きを完了させなければなりません。
アメリカでは不動産価格が上がれば、その分家賃も高騰するという設定金額には決まりがあります。
月額家賃は住宅価格の0.8%から1.1%くらいの間が目安なのです。
コロナによって不動産価格も上昇しているから、家賃も自ずと高くなり、払いたくても払えない状況に陥る住民が後を絶ちません。
突然家賃の値上げ通告が家主から来ることも珍しくありません。
月$1500(約20万円)で借りていたアパートの家賃が、更新後に$1700(約25万円)になりますという連絡が突然来たりするのです。
一気に5万円も賃料が上がるなんて…どうやって暮らしていけばいいのでしょう…。
コロナ救済のため、政府が家主に立退命令を出すことを一時的に禁止した、「立ち退きモラトリアム」でしたが、ロックダウン中のアメリカで数百万世帯もの家族に安全な住居を無料で提供しましたところまではとても良い方策に思えました。
しかし救済のための助成金が、今となっては貸す側と借りる側、両方の人々の生活を圧迫する結果となってしまったようです。
このままでいくとここ10年間でアメリカのホームレスは3倍になるのではないかとも言われています。
↑ https://karapaia.com/archives/52315599.htmlより引用させていただきました
ロサンゼルスなどでもどこもかしこもホームレスのテントが並んでいます。
アメリカはコロナ渦より以前から、かなりホームレスの問題が深刻化していた地域でもありました。
今や6万人以上が路上生活をしているのです。
ダウンタウンだけではありません。
ハリウッド・ブールバードやウォーク・オブ・フェイムなどの裕福な区域にまでテントの列は広がっているのです。
キャンピングカーやトレーラーに住んでいる人も多く、ショッピングセンターなどの駐車場を無料で利用してしまっていたりします。
全てのホテルが毎日の空室を報告し、空室があればホームレスに提供することを義務化する法案を提出していますが、これに対しては2024年の3月に住民投票で結果が決まるようなのでまだまだ先になります。
ロサンゼルスでは、6万以上のホームレスが路上で夜を明かす間、2万を超えるホテルが空室状態となっているのが現状です。
だけど考えてみると、ホームレスを泊めたり出入りをするホテルに、一般の旅行者が泊るというのはとっても治安という視点からも普通の状況では考えられないと思うのですがどうでしょう…。
↑ 私の留学当時は湾岸戦争の後でこういう光景もよく出会いました
ホームレスの施設と旅人がお金を払って泊まるホテルとを混同することは出来ないと思ってしまいます。
こういうホテルは、当然一般の宿泊客を遠ざけることになってしまいますね…。
ニューヨーク州のニューヨーク市でも学生の10人に1人がホームレスの支援施設や親戚の家で暮らしています。
施設で収容できる人数にも限界があり、通りや地下鉄で眠る人々も増えてしまっています。
ブロンクスの公立高校のひとつであるキングズブリッジ・インターナショナル高校では一時期44%の学生がホームレスの状態でした。
↑ https://karapaia.com/archives/52266407.htmlより引用させていただきました
遅刻なども多く、成績も振るわないのも当然のように思えてきます。
こういうニュースを見るとアメリカが「世界恐慌」の頃の川の両脇に貼られたテントの光景を思い出します。
↑ http://labaq.com/archives/51938615.htmlより引用させていただきました
自分が経験したことではありません。
息子の出演があったために、私が何度も鑑賞した「ミュージカルアニー」で観た光景なんです。
歴史は繰り返され、戦争やパンデミックがある度に世界的な不景気がやって来るという構図は避けられないのかもしれません。
私たちもどのようになったらホームレスに陥って行く人の割合が増えていくのかを対岸の話で終わらせてはいけないと思います。
状況は日本だってそんなには変わりません。
ものは高くなり、不動産も上昇しています。
ホームレスが増えてしまうメカニズムを知ることによって、日本では早め早めの対策を講じて真剣に取り組んでいかないと大変なことになってしまうのではないかと心配です。
帰る家があることは本当に幸せなことだと改めて思ってしまいます。m(__)m