吉田修一さんが書かれた小説「国宝」を映画にしたものですが、吉田さん自身が実際に歌舞伎の楽屋に入って黒衣を着て経験して書いた小説も素晴らしいのだと思います。
読んではいませんが、それを映画にするのはどんなに大変だったことでしょう…。
監督は「フラガール」の李相日監督で、脚本は「サマー・ウォーズ」の奥寺佐渡子さんという素晴らしいタッグで、ヒットの要素がいっぱいです。
そこにあの若手役者の中でも才能溢れるの吉沢亮さんと横浜流星さん!
他にも素晴らしい役者さん揃いで、息を吞むほどの演技を終始見せてくれました。
私が一番着目していたのはソフィアン・エル・ファニという撮影カメラマンです。
大好きな「アデル、ブルーは熱い色」を撮った方ということで、絶対に観なくてはいけないと思った作品でした。
↑ https://eiga.com/movie/79242/interview/より引用させていただきました
この映画でレア・セドゥは大きく飛躍したと思っています。
そして、この美しい歌舞伎の色を見事にカメラに収めていらっしゃって、ため息が出る美しさでした。
時間は3時間弱という長い作品ですが、これだけのものを撮るのだからその位は確かに必要でしょう…と納得してしまう完成度でした。
任侠の家に生まれ、目の前で父を殺された喜久雄(吉沢亮・青年時代は黒川想矢)を上方歌舞伎の名門の当主である花井半二郎(渡辺謙)が引き取り、息子の俊介(横浜流星・青年時代は越山敬達)と共に歌舞伎の女形として育てていきます。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像(11) - 映画.comより引用させていただきました
その稽古の厳しさや二人が切磋琢磨してお互いをライバルとしても兄弟としても共に成長していく様は本当にこの世界の厳しさと華やかさの両面からも食い入るように観てしまいました。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像 - 映画.comより引用させていただきました
まず、吉沢さんと横浜さんの女形の素晴らしさ…稽古は1年半にも及んでいたんですね!
世襲が当たり前の歌舞伎役者の世界で、血筋から将来を約束されている俊介と生まれ持った才能に恵まれた喜久雄の人生が交錯していきます。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像(5) - 映画.comより引用させていただきました
「国宝」という映画を私は様々な方面から観させていただきました。
- 国宝という人生を選び、様々な人を悲しませてきた喜久雄
- 兎に角一度は逃げるしかなかった苦しい選択をすることしか出来なかった俊介
- そんな二人をわかっていても我が子俊介のことをいつも想っている母幸子(寺島しのぶ)
- 良いものは良いと認め、喜久雄を代役に立てた半二郎
- 喜久雄と俊介の間で揺れ動き、俊介と人生を歩んだ喜久雄の幼馴染春江(高畑充希)
- 若い時から喜久雄の将来を予見し、彼の子を産み1人で育てた藤駒(見上愛)
この6人からは一時も目を外せなかったです。
役者の母親…という意味で、寺島さん演じる母親幸子の心情が一番共感するところでした。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像(7) - 映画.comより引用させていただきました
夫の半二郎には我が子である俊介を一番に考えて欲しかったし、それでも喜久雄の才能には早くから気づいていた…。
本人たちの気持ちも勿論ですが、私はこの父と母の気持ちが一番切なく、辛く感じました。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像(25) - 映画.comより引用させていただきました
私もいつも思っていました。
息子が俳優になると言った時、反対したくなった理由の一つが俳優の世界も世襲が強いことも感じていたというのがあります。
子供の頃から有名な方のお子さんはいつも取材され、良い役もいただいていました。
それが当たり前で、血筋というのはやっぱり受け継がれているものだと身近で観ていて思ったりもしました。
全く歌舞伎の世界とは比べられないほど、普通の俳優さんの場合は世襲も大げさなものではありませんが、それでも感じることが多かったです。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像(24) - 映画.comより引用させていただきました
喜久雄が感じるプレッシャーはどれほどだったのか…考えると恐ろしくなります。
悪魔と取引してでも、やっぱり芸を国宝にまでもって行きたかったのだと思います。
一方の俊介はどれほど苦しかったことでしょう…。
自分など普通の家に生まれてくれれば良かった…とどれだけ思ったことでしょう…。
- どちらも辛いです!
- そして親もまた辛い!
- その人生に寄りそう女性たちも辛い!
そんな中で生まれた本物の芸能が誰からも認められ、やっと喜久雄自身も「観たかった景色」を観ることができたんですね…。
壮大なストーリーでしたが、一人一人の心をビー玉に閉じ込めて映し出したような演出も素晴らしかった。
↑ 国宝 : フォトギャラリー 画像(6) - 映画.comより引用させていただきました
そして歌舞伎の美しさ、心から舞う二人の素晴らしさを本当に美しく撮ったエル・ファニのカメラも完璧だったと思います。
日本の歌舞伎を知らずとも、美しいものをそのまんま、そして彼らの心情までも美しく撮る技術…素晴らしいです!!
↑ https://hollywoodreporter.jp/fest/cannes/111804/より引用させていただきました
(カンヌ映画祭にて)
世界で上映されれば必ず素晴らしい賞を沢山取れる作品だと思います。
吉沢さんと横浜さん!本当に魅了されました…。
そして子役のお2人も素晴らしかったです。
本物の役者魂を見せていただきました。
間違いなく今年の今までの映画の中では1番でした!